ボーイフレンドの名前は広村周治と言う同じ高校の同級生だった。同じ受験生でライバルでもある。そんな彼と今年の春頃から仲が良くなりメール交換をしている。夜遅くまで図書館で勉強する事もあった。そんな私達の関係は同級生も知らない二人だけの秘密だった。
数日後の土曜日も学校で補講を受け終わると祖父母の家に一緒に行く事になった。祖父母の住むマンションは高校の近くにあり自転車で行った。
私は彼の事を学校では広村君と呼び、二人で話す時はシュウと呼んでいた。彼も私を学校では一條さんと呼び、それ以外はハルと呼んでいた。
その日も学校が終ると事前に祖母に連絡をしていたので家に入ると温かく迎えてくれた。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、広村君よ」
と私は玄関前で二人に紹介した。
直ぐにリビングに通されると、祖母は私に台所に来るように言った。
祖母は台所からやたらと後ろを振り向いていた。何となく落着きなくそわそわしていた。
「お祖母ちゃん、さっきからジロジロ見て」
と私は祖母と一緒に飲物とお菓子の準備している時に聞いた。
「ねえ、どうしたの」
と私は再び聞いた。
「前にも話したけど、曽祖母の恋人に似ているんだよ」
「それは戦死した秋本修二さんの事なの」
「そうなんだよ。まるで生き写しで似ているの。それに名前までもが修二と周治と、字は違うけど呼び方は一緒でしょう。驚いたんだよ」
と祖母が言うと、私は用意したお菓子と飲物を持って行った。
すると祖母は、仏壇の棚から写真を取り出して来た。
その写真は亡くなった秋本修二さんの若い頃のものだった。
その後、学校や家族の事を聞いているとお祖母ちゃんが突然、写真を出して皆の前で見せた。私は、内心、今、出さなくても言おうとしたが話さなかった。シュウも写真を見ると驚いていた。それは曽祖母と秋本修二が並んでいる写真だった。修二が部隊に入る直前に取った写真だった。その写真からは修二の表情がこわばっているように見えた。
「その人、曽祖母の恋人だった人なの」
と春香が言うとシュウは暫く見ていた。
数分が過ぎた。色褪せた写真から見る修二は、体格も顔形も似ていた。まるで自分が写っているような雰囲気だった。
すると突然、シュウは皆なの前で話した。
「隣にいる人は、春香の曽祖母なんですか」
と春香の顔を見て聞いた。
私は黙って頷くとシュウは再び言った。
「春香にそっくりじゃないか」
「シュウもそう思う」
「今、お祖母ちゃんも私とシュウを見て写真の二人に似ていると言うの。二人は恋人同士だっけど、その男性は戦死したの。将来、戦争が終わったら結婚を約束していたの
「まるで僕と春香が並んでいるような姿だね」
とシュウは皆の前で話した。
「でも不思議だよね。もう七十年前の話しなのに、誰もが間違えるほど似ている人がいるのね」
と祖母は皆の前で話した。
「そうだな、俺も驚いたよ。それに漢字は違うけど呼名は同じだし」
と祖父までが話した。
「二人は、これからどうするの」
と祖母は周治に聞いた。
「お祖母ちゃん、何言っているのよ。まだ私達は高校生だよ。それに大学に行くのよ」
と春香は祖母を見て怒るように話した。
「それに私とシュウは恋人じゃないし、ただの友達同士なんだから、失礼な事を言わないでよ」
と私が言うと皆は大笑いした。
「それは冗談よ」
と祖母は打ち消すように言った。
「でも二人で並んでいると亡くなった曽祖母の若い時とその恋人にそっくりよ」
と祖母が言うと、そこからはボーイフレンドとガールフレンドの普通の高校生に戻っていた
水龍頭。
その後、二人の関係は卒業まで秘密に続いた。しかし卒業した日に皆に告白すると誰もが驚いていた。卒業後も別な道を進みお互いに新しい地で新しい友情も芽生えた。
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